こんにちは、テープ起こし アトリエ・ソレイユの北村です。
アトリエ・ソレイユのテープ起こしは、どんな作業工程を経て原稿を納品させていただくのか。
ここで一挙ご紹介してみることにしました。
なお、これはあくまでも私独自の作業工程で、テープ起こし屋さん各々のやり方があると思います。
その点は、どうかあしからず願います。
☆1回目・・・粗起こし作業
ヘッドホンを装着し、音声を再生しながら、最初から最後まで一通りザーッと粗起こしをします。
その際、ご希望の起こし方の種類によって変わってきますが、「素起こし」の場合は発言どおり一語一句そのままに、
「ケバ取り」「整文」の場合は、ある程度のケバを取りながら起こしていきます。
ちなみに、このとき使用するのは「Okoshiyasu2(おこしやす2)」という音声再生ソフト。
テープ起こしに特化した、テープ起こし屋の最大の武器とも言えるソフトです。
また、私たち人間が通常使う言葉には、「えー」「えーと」「あー」「あのー」「そのー」とか、
特に意味を持たない「けど」「けれども」などを口癖のように語尾に付けたりしますよね。
このように、文脈や文意に関係のない言葉を、テープ起こし業界では「ケバ」と呼びます。
さて、この段階での作業では、普通の録音状態なら、1時間の作業で約10分~20分の音声を起こしていけますが、
録音状態が良くないもの、多人数の会話などでは、その半分ぐらいだったり、なかなか進まないことも多々あります。
そして、この時点では、聞き取れない言葉や難しい専門用語などは、とりあえずそのままにしておき、後の作業のためにマーキングしておきます。
☆2回目・・・念入りな聞き直しと校正作業
1回目とは別の音声再生ソフトを使い、念入りに聞き直しをしながら校正作業に入ります。
つまり、1回目にマーキングした箇所の突き詰め作業でもあります。
1回目に聞き取れなかった箇所は、聞き取れるまで何度も何度も聞き直します。
そして、いろいろな作業を同時進行させながら本格的作業に入ります。
発言者の声の聞き分け(話者立て)
2人以上の会話の場合は、声を正確に聞き分けて発言者を特定していきます。
人数が多ければ多いほど、声の聞き分けには苦労しますが、それぞれの声質や話し方の特徴をつかむことがキーポイント!
長年の経験で7~8人ぐらいまでなら自然に特定できますが、それ以上の人数だったり、声質の似た方がいる場合は困難なケースも。
その場合は、それぞれの声のサンプリングを作成し、それを使いながら正確に聞き分けしていきます。
ちなみに、お客さまから「話者メモ」や「発言メモ」をご提供いただくことがあるのですが、それは大変ありがたく、助かっています。
文章の整理
「素起こし」の場合は、句読点の位置に細かく配慮をし、意味の通じやすい、読みやすい原稿に仕上げていきます。
「ケバ取り」「整文」の場合は、ケバを適宜に取りながら、文章の整理をしていきます。
このとき、何がケバなのかの判断力、前後の文脈を考えながら意味の通じる文章に構築していく整文力、そういった「国語力」「国語的センス」が有る無しで原稿の完成度がグッと左右されます。
さらに、その原稿を第三者が読んだとき、読み手が理解できる文章になっているか。
ただ単に書き起こしただけ、ケバを取っただけの原稿ではプロの仕事とは言えません。
私はそれを最も意識して、文章の整理をしています。
専門用語・固有名詞等の検索
専門用語・固有名詞等をインターネットで検索して調べていきます。
ここでは、いわゆる「検索力」が必要になってきます。
目指す用語や固有名詞にヒットできるまで、検索ワードをあれこれ取っ換え引っ換え、いろいろな方向から攻めながら検索の旅へ。
日本語でヒットしなければ、英語でも検索していきます。
正直なところ、この検索作業が最も時間を要し、最も勝負を賭ける時間です。
1時間ひたすら粘っても、たった5分の音声しか進まなかったり、
分野によっては、1つの用語や固有名詞にたどり着くまで数時間かかることもザラにあります。
ですから、「コレだ!」という言葉に到達・着地できたとき、もう泣きたくなるほどうれしいです !
長年やっていても、この喜びと感動は変わりません。
☆ここでちょっと箸休め的に…
検索作業が「最も勝負を賭ける時間」と書きましたが、ここはとにかく根気の要る、長い長い道のりです。
ですから、ここで頑張れる人、粘れる人、くじけない人、あきらめない人。
そういう人でないと、テープ起こしのプロにはなれないと思っています。
それに加えて、例えば日常生活の中で分からないことや知らない言葉に遭遇したとき、
そこですぐに人に質問するのではなく、まずは自分で調べてみる。
つまり、調べずにはいられない人、調べることが好きな人。
そういうことが非常に大切で、テープ起こしのプロに必要な適性だと思っています。
☆3回目・・・さらに粘り強く作業
さて話は戻り、まだまだあきらめずに、しぶとく粘ります。
寝不足のままだと、やはり体力、聴力、集中力に限界が来ますので、可能な限り睡眠はとるようにしています。
そうすると、うそのようにスーッと聞き取れたり、検索の能率もグ~ンとアップします。
また、時間と距離をちょっと置いてみることも大切です。
その作業から少し離れて、例えば家事をしているとき、検索の別の方向性がフッとひらめくことも。
まさしく「神が降りてきたー!」という、胸躍る感じ。
そんな思わぬ奇跡が起きることもありますので、最後の最後まで、あきらめずに粘り続けます。
そして原稿全体の再チェックを行い、納期まで時間があれば4回目5回目と粘るときもあります。
☆そんな作業を経て・・・納品!
このように、「とことん粘る」「あきらめない」「しつこい」作業を経て、原稿をお客さまに納品しています。
よって、納品後の達成感と完全燃焼感は、ひとしおです。
とはいえ、どうしてもギブアップで、お手上げの箇所を残してしまうことも事実あって、
そういうときは本当に悔しくて悔しくてたまりません。
でも、「やれるだけのことはやった!」と心から言えるよう、最後まであきらめないことが私の信念です。
今後もますます奮励努力してまいりますので、アトリエ・ソレイユのテープ起こしをよろしくお願いいたします。